Giomer / S-PRGフィラーに関するQ&A

Q.1 Giomerはグラスアイオノマーセメントに分類されるのか?
A いいえ、Giomerはグラスアイオノマーセメントのカテゴリーに属するものではない。
Giomerに含まれているS-PRGフィラーは酸-塩基反応(グラスアイオノマー反応)を用いて製造(P4-5参照)されていることから、S-PRGフィラーの名称(Surface Type Pre-Reacted Glass-ionomer)にグラスアイオノマーという専門用語を使用している。
そのため、グラスアイオノマーセメントの一種と勘違いされやすいが、それは間違った理解である。現在Giomerの中に製品として存在しないものの、将来的にS-PRGフィラーを応用したグラスアイオノマーセメントが開発されれば、それはGiomerであって、且つグラスアイオノマーセメントのカテゴリーにも属するものとなる。
Q.2 Giomerはコンポジットレジンのカテゴリーに分類されるのか?
A いいえ、Giomerはコンポジットレジンのカテゴリーに属するものではない。
しかし、Giomerの中にはS-PRGフィラーを応用したコンポジットレジンもあるため、これらはGiomer コンポジットレジン又はGiomer レストラティブという表現を用いることができ、コンポジットレジンのカテゴリーに入るものである。
Q.3 Giomerは修復材料に限定されているのか?
A いいえ、以前はGiomerにはボンディング材やコンポジットレジンのような保存修復に用いる材料しか存在しなかったためGiomer=修復材というイメージが強かった。
しかし、Giomerは決して修復材料のみを指しているものではない。
その一方でGiomerにはビューティフィルⅡ、ビューティフィルフロープラスX、ビューティフィルバルクなどの修復材料系の製品も含まれているため、それらを指す場合はGiomer コンポジットレジン又はGiomer レストラティブという表現を用いることができる。
Q.4 Giomerはレジン系材料に限定されているのか?
A いいえ、決してレジン系材料のみを指すものではない。
Giomerにはレジン系材料以外に無機系仮着セメント、PMTC用トリートメントペースト、そして修復物の最終研磨に用いる研磨ペーストなどが存在する。
将来に向けた製品開発の方向性として、製品分野・領域を拡大しながら製品群を拡充することを視野に入れており、近い将来、歯内領域、口腔衛生領域、そして口腔ケア領域まで製品展開を拡大する予定にしている。
Q.5 Giomerはグラスアイオノマーセメントとコンポジットレジンを融合させたものか?
A いいえ、Giomer / PRG技術を世界に発表した2000年頃、Giomerにはボンディング材やコンポジットレジン等の保存修復治療に用いる製品しか存在していなかった。
そのため、同じ保存修復領域で用いられているグラスアイオノマーセメントを参考にしながら、その最大の特長であるフッ化物イオン徐放性に着目して「グラスアイオノマーセメントとコンポジットレジンの融合」というコンセプトを掲げていた。
しかし、現在はGiomerのコンセプトも進化・変化してきており、最大の特長は「6種類のマルチイオン徐放によるバイオアクティブ効果の発現」となっている。
またGiomerの開発領域も歯科医療や口腔ケア等に用いる様々な歯科関連製品まで拡大していることから、Giomer=“バイオアクティブ材料”という新しい位置付けになっており、グラスアイオノマーセメントとコンポジットレジンを融合させたものではない。
Q.6 GiomerとCompomerは何が違うのか?
A 両者は全く異なったものである。
Compomerの名称はComposite ResinとGlass-ionomer cementの造語に由来する。
このCompomerは主成分として重合性モノマー、光触媒、充填用フィラーから構成される充填材料であり、重合性モノマーの一部として酸性基含有重合性モノマー(カルボン酸基含有重合性モノマー)と、充填用フィラーとしてフルオロアルミノシリケートガラス(塩基性ガラスフィラー)を含んでいることが特長である。
このCompomerを口腔内の窩洞に充填・光照射により硬化させた後、唾液などの水分を吸収することによって重合したポリマーネットワークに結合しているカルボン酸基と充填材であるフルオロアルミノシリケートガラス(塩基性ガラスフィラー)が酸-塩基反応(グラスアイオノマー反応)してグラスアイオノマー相を形成し、フッ化物イオンを徐放するメカニズムとなっている。
つまり硬化後に水分を吸収して酸-塩基反応(グラスアイオノマー反応)が起こることから、二次的な構造変化を伴うため材料安定性・耐久性が懸念される。
一方、Giomerは予め安定なグラスアイオノマー相(多量のマルチイオンをトラップして徐放する貯蔵庫として機能)を形成させたS-PRGフィラーを含むことによって、硬化したGiomer内部で二次的な構造変化が起こることなくマルチイオンを徐放する。
そのためGiomerとCompomerは材料構造やコンセプトなどのすべての面において異なっている。
Q.7 Giomerの名称由来は?
A Giomerに含まれているS-PRGフィラーは酸-塩基反応(グラスアイオノマー反応:Glass-ionomer reaction)を用いて製造している。
以前はこのS-PRGフィラーをレジン系材料(ポリマー材料:Polymer)に応用してGlass-ionomer cementの最大の特長であるフッ化物リリース&リチャージをレジン系材料に発現させることをメインクレームとしていたことから、Giomerの名称由来を「Glass-ionomer」+「Polymer」の造語としていた。
しかし、現在はGiomerもNew Generationとしてコンセプトも変化、そして進化拡大してきている。
現在はS-PRGフィラーを含むことにより6種類のマルチイオンを徐放し、バイオアクティブ効果を発現することがGiomerのメインクレームとなっている。このバイオアクティブ効果はS-PRGフィラー中に形成されたグラスアイオノマー相(多量のマルチイオンをトラップして徐放する貯蔵庫として機能)をGiomer中に含んでいることに基因するため、グラスアイオノマー相「Glass-ionomer Phase」の文字をとってGiomerと新しく命名するのが適切であると考えられる。
Q.8 Giomerの最大の特長はフッ素リリース&リチャージか?
A いいえ、それは大きな間違いである。
Giomerの最大の特長はマルチイオンリリース&リチャージである。
このマルチイオンの中にはフッ化物イオンも含まれるが、他にストロンチウムイオン、ボロン酸イオン、ナトリウムイオン、アルミニウムイオン、ケイ酸イオンからなる6種類のイオンが含まれており、これらはS-PRGフィラーから徐放するものである。
この6種類のマルチイオンの相乗効果により、webサイトで紹介しているようなバイオアクティブ効果が発現すると報告されている。
Q.9 S-PRGフィラーの3層構造はどのような製造過程を踏んで製造されているのか?
A 原料の高温溶解により多機能性ガラス(フルオロボロアルミノシリケートガラス)を製造後、そのガラスを微粉砕しながら、ガラスフィラーの粒子径を制御。
その後ゾル-ゲル法にてガラスフィラー表層に多孔性無機シリカガラス層(表面改質層)をコーティングして表面改質多機能性ガラスフィラーを製造。
そして、その表面改質多機能性ガラスフィラーにポリアクリル酸水溶液を噴霧することにより、表面改質層の内層、そして多機能性ガラスコアの表層に位置する中間層にグラスアイオノマー相を形成して3層構造となるS-PRGフィラーを製造。これらの製造手順から最外層である表面改質層を形成した後にグラスアイオノマー相が形成されていることが理解できる。